HII領域で実際に星が誕生する場面は、生まれたばかりの星を取り巻くガスと塵の濃い雲に隠されて見ることができない。星からの輻射圧によって星の「繭」が取り払われて初めて我々が目にすることができるようになる。それより前は、新しい星を含んだ密度の濃い領域が電離した星雲の前にシルエットとして見えている場合が多い。これらの暗い染みは、1940年にこの暗い領域が星の誕生する場所である可能性を示した天文学者、バート・ボックにちなんで、ボックのグロビュールとして知られている。
ボックの仮説が確かめられたのは1990年になってからであった。赤外線観測によってついにボックのグロビュールの厚い塵の層を見通すことができ、若い恒星状の天体が内部に存在することが明かされた。現在では、典型的なボックグロビュールは1光年程度の大きさで約10太陽質量の質量を持ち、連星や複数の星からなる恒星系を作る元となっていると考えられている。
HII領域は星が誕生する場所であるだけでなく、その中には惑星系も存在するという証拠が見つかっている。ハッブル宇宙望遠鏡はオリオン大星雲の中に数百個の原始惑星系円盤を発見している。オリオン大星雲にある若い星のうち少なくとも半数にはガスと塵の円盤が取り巻いており、我々の太陽系のような惑星系を作るのに必要な量の何倍もの物質を含んでいると見られている。
HII領域の特徴 [編集]
物理的特徴 [編集]
HII領域は物によって物理的特性が大きく異なっている。その大きさは、超コンパクトHII領域と呼ばれる直径1光年未満のものもあれば直径数百光年の巨大HII領域もある。密度は、超コンパクトHII領域の場合は水素原子100万個/cm? 以上に達するが、大きなHII領域では数個/cm? 程度に過ぎない。
HII領域の大きさによって若干変わるが、HII領域の中には数千個の恒星が存在する。このため、中心に電離源となる星が一つだけある惑星状星雲と比べるとHII領域の構造は非常に複雑である。典型的なHII領域は約10000Kの温度を持つ。
化学的にはHII領域は約90%を水素が占める。波長656.3nmの水素の輝線(Hα線)が最も強いため、HII領域は特徴的な赤色をしている。水素以外の残りはヘリウムや他の重元素である。銀河系全体を見渡してみると、HII領域に含まれる重元素の量は銀河中心からの距離が大きくなるにつれて減少する傾向にあることが知られている。これは、密度の高い銀河中心領域の方が星形成率が高く、結果として銀河中心部では元素合成の生成物である重元素が星間物質に豊富に含まれるようになるためである。
HII領域の数と分布
HII領域は我々の銀河系のような渦巻銀河や不規則銀河の中にしか存在せず、楕円銀河では決して見ることがない。不規則銀河の場合には銀河内の至る所に存在するが、渦巻銀河の場合には常に渦状腕に沿った場所にだけ見られる。大きな渦巻銀河には数千個のHII領域が含まれていることもある。
楕円銀河にHII領域がない理由としては、楕円銀河が銀河同士の衝突・合体によって作られたためであると考えられる。銀河団の中ではこのような衝突・合体はしばしば起こっている。銀河同士が衝突すると、個々の星はまずほとんど衝突しないが、巨大分子雲やHII領域は激しい擾乱を受ける。このような状況の下では膨大な数の星形成が爆発的に引き起こされ、ガスのほとんど全てが星に変わる。通常の星形成でガスが星に変わる割合がガス全体の質量の10%以下であるのと比べると、非常に急速で激しい過程である。このような急速な星形成が起こっている銀河はスターバースト銀河として知られている。衝突・合体によってできた楕円銀河は非常にガス成分が少なく、そのためにHII領域はもはや作られないのである。
近年の観測では、ごく少数のHII領域が銀河の外に固まって存在している例が見つかっている。これらの銀河間HII領域は小さな銀河が潮汐破壊された残骸ではないかとみられている。
形態 [編集]
HII領域のサイズは非常にばらつきが大きい。HII領域内の個々の星はそれぞれ星を取り囲むほぼ球状の領域を電離するが、複数の星々によってできた電離ガス球が組み合わさり、また加熱された星雲が周囲のガスの中を膨張することによって膨張面の内と外で密度が大きく異なった構造を作るため、結果としてHII領域は複雑な形を持つようになる。超新星爆発もまたHII領域を変形させる。場合によっては、HII領域の中で大規模な星団が生まれたために内側からくり抜かれたような構造になることもある。さんかく座のM33銀河にある巨大HII領域 NGC604 はこのような例である。
注目すべきHII領域 [編集]
我々の銀河系の中で最もよく知られているHII領域はオリオン大星雲である。この星雲は地球から約1500光年の距離にある。オリオン大星雲はオリオン座のほぼ全体を覆うように存在する巨大分子雲の一部である。馬頭星雲やバーナードループはこの分子雲の別の一部分が光っているものである。
銀河系の伴銀河である大マゼラン雲にはタランチュラ星雲と呼ばれる巨大HII領域がある。この星雲はオリオン大星雲よりもずっと大きく、何千個もの星を生み出している。ここで生まれている星の中には太陽の100倍もの質量を持つものもある。タランチュラ星雲が地球からオリオン大星雲と同じ距離にあったとすると、夜空で満月と同じくらいの明るさで輝いているのが見えるはずである。超新星 SN 1987A はタランチュラ星雲の周辺部で起こった。
NGC604はタランチュラ星雲よりもさらに大きく約1300光年の広がりを持つが、中に含まれる星はわずかに少ない。この星雲は局部銀河群の中で最も大きなHII領域の一つである。
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